蓮文化研究会設立趣意書    1999
  近年、蓮の花が人生、人事と織りまぜた中で多くとりあげられる傾向が顕著にうかがえます。吉祥の花として博物館の特別企画で大く取り上げられたり、開花時における温度調節のレポートが科学雑誌に掲載されるなどはその一例です。
  夏の開花期には各地の花蓮の大群落の光景がテレビなどでしばしば放送されますし、「カスピ海にイランの楽園復活」の見出しで、西アジアの蓮の花群落を伝える新聞報道に接するなど、国内外のさまざまな蓮情報にふれる機会もたいへん多くなったように思われます。
  ちなみに、蓮の花をめぐる独自なケースをあげてみますと、新潟・十日町市での大賀蓮の単一栽培の維持管理、京都・旧巨椋池の花蓮の品種保存、滋賀・守山市の近江妙蓮の保護・育成など快挙にいとまがありません。しかも、こうした事例はどれも、人と花とのかかわりの深さを伝え、花をめぐる人の心の秘境に余すところなく示しております。花は、私たちの生活にとって、まさしく文化的存在であると申せましょう。
  二酸化炭素などの増加による人為的な地球温暖化が危惧される今日、「有限な地球」にふさわしい循環型の産業社会につくりかえる構想力がもとめられています。
  そこで私どもは、なるべく多くの分野の人の集まりをもつことにより、蓮の花をめぐる歴史文化に対する多面的アプローチを容易にし緑地環境の保全等に対する視点をより的確なものにすることができないかと考えております。
  本研究会は、そうした意図から構想されたものです。メンバーは蓮の栽培管理、新品種の開発など育成技術の研究に従事するもの、文学、哲学等の学術研究に携わるもの、さまざまなバックグラウンドをもつ一般の花蓮愛好家などからなり、それぞれの研鑚と自然な交流を目的とするものです。
  したがいまして、本研究会はひとえに、蓮の花を主テーマとする研究の成果、ならびに情報交流がもたらす相互理解と連帯感を通じ、未来づくりに有効な発想の提起と技術開発を願ってやまないところであります。